建設業で独立したい。準備で気をつけることを知りたい
このようお悩みを解決しますね
建設業許可を取得するためには、申請書類の他に「許可の要件を証明するための書類」を準備する必要があります。
建設業許可の申請をしようと思ったときに、要件は満たしているのにそれを証明するための書類が用意できなくて申請ができないといった、もったいないケースも少なくありません。
具体的には、このような書類が必要です。
- 確定申告書(個人の場合)
- 登記簿謄本(法人の場合)
- 建設業の取引を証明する書類
- 資格証明書(書類が大幅に省略)
- 欠格要件に該当しない旨の証明書類
- 社会保険の加入を証明する書類
ここでは、近い将来に建設業許可の取得を考えている方向けに、今日からできる建設業許可を取得するための準備についてご説明します。
この記事を書いた人
牧 健太 行政書士
建設業の許可申請が得意な行政書士
趣 味 ガーデニング
準備1.事業所得で確定申告をしましょう
一人親方や個人で事業を行っている方は、毎年確定申告をされているかと思います。
確定申告書は証明書類として使えます
建設業許可の要件の1つに、個人事業主などの経営者の経験が5年以上必要になるというのがあるのですが、これを証明するときに必要になるのが確定申告書の控え書類になります。
そもそも確定申告をしていなかったという方は、事業を営んでいた証明ができませんので、もちろんダメなのですが、きちんと確定申告をしていたのに、控えの書類を失くしてしまったという方もよくいます。
古い書類をいつまでも取っておくのは面倒だというお気持ちはよく分かりますが、建設業許可の申請に使える財産だと考えてしっかり保存しておきましょう。
確定申告書を紛失してしまった場合
税務署で手続きをすれば、過去7年分までは写しを再発行してくれる制度があります。
しかし、7年より前の書類は手に入れることはできません。
手続きも面倒ですし、発効までに1か月ぐらい時間がかかったりしますので、ご自身のお手元にあるのが一番です。
確定申告書を提出していたのに使えない場合
次に多いのが確定申告をお手元に保存していたのに、使えないというケースです。
「税務署の受領印がない場合」と「給与所得で申告してしまっている場合」があります。
ケース1「税務署の受領印がない場合」
1つ目は、控えの書類に税務署の受領印がない場合です。
税務署に提出する前の書類を保存しているとか、確定申告をインターネットで電子申告をして、その記録がない書類を保存してしまっているなどの理由だと思います。
この場合は、控えの書類を失くしてしまったのと同じ取り扱いになってしまいます。
ケース2「所得の種類が給与所得になっている場合」
2つ目は、確定申告の所得の名目が給与所得になってしまっている場合です。
細かい説明は省きますが、個人事業で経営をしている方の確定申告は、事業所得という名目で申告しなければなりません。
給与所得で申告していると誰かに雇われていたことになってしまいますので、経営者としての証明にはなりません。
経費の領収書を集計するのが面倒だからとか、確定申告の無料相談会で言われるままに申告してしまったなどとお聞きしますが、どうせ確定申告をするのであれば事業所得として申告するようにしましょう。
準備2.役員登記を忘れずに
経営者としての経験証明には役員登記の証明が必要
個人事業主の経験を使う場合は確定申告書の写しでOKです。
しかし、法人の場合は登記簿謄本に取締役として記載されている期間で証明します。
口約束は危険、必ず登記簿謄本で確認を
自分は会社の役員だと聞いていたのに、会社を辞めて独立した後に登記簿謄本を見てみたら登記がされていなかった。
現在お勤めの会社で役員をされているという方は、念のため会社の登記簿謄本を取得してみてください。登記の情報は一般に公開されていますので、法務局でどなたでも閲覧することが可能です。
役員になれる機会を有効に使おう
また、現在は一般の従業員としてお勤めされている方は、独立して事業を始めた後もご自身の経験だけでは5年が経つのを待たないと許可の申請ができません。
今の会社で役員になるチャンスがあるのでしたら、あとあと使える経験になるかもしれませんね。
準備3.取引記録を残そう
経営者としての経験が確かに証明できたとして、次はその経営経験が建設業のものかどうかが重要になります。
どんな取引記録を残すの?
建設業を営んでいたという証明には一般的に工事の請負契約書、注文書・請負書、売上の請求書、預金通帳の入金の記録などを使用します。
どれくらいの期間の書類が必要?
いずれも最低でも5年以上の書類は必要になりますので、まずは過去の書類を保存しておくことを心掛けてください。
どんな内容が記載されていればいいの?
建設業の工事を請け負っていたんだなと誰が見ても分かるように、少なくとも、
- 現場名
- 請負金額
- 工事の内容
- 工期
この4つぐらいは記載されていることが望ましいです。
取引記録を残すポイント
取引の記録は書面で残して、支払いは振込にしてもらうように取引先にお願いしてみましょう。
わりと大きな会社と取引している場合は心配ないのですが、取引先に求められなかったので請求書などを発行していなかったとか、現金手渡しで代金を受領していたので通帳に取引の記録がないなど取引の記録がないために証明が困難になるケースもあります。
お互い手間がかからずに一見すると楽なように思えますが、あとあと許可の申請をする際に苦労することになりかねません。
準備4・資格の取得がおすすめ
10年分の書類を省略する方法
一定の資格を保有していれば、面倒な書類を準備する手間が省けます。
申請する許可の種類によって異なりますが、代表的な資格はごらんの通り。
- 建設機械施工技士
- 土木施工管理技士
- 建築施工管理技士
- 建築士
- 建築大工(技能検定)
- 左官(技能検定)
- とび・とび工(技能検定)
とくに、土木施工管理技士と建築施工管理技士は幅広く使える資格です。
工事の経験を証明する書類は意外と大変
建設業の現場で10年以上経験を積んでいると許可を申請する際の要件を1つ満たすのですが、これを証明するのが結構大変だったりします。
今までにお話してきた工事の経験を証明する書類を5年分そろえるのも大変なのに、同じ書類を10年分となると保存している方のほうがめずらしいぐらいです。
ご自身の会社の書類でしたらまだ何とかなりそうですが、他の会社にお勤めだった経験となると他人の会社に書類を用意してもらわなければなりません。
退職の仕方があまり円満ではなかったので今さらお願いできないとか、普通に考えても他人に請求書や通帳を見せるのって抵抗がありますよね。
実はこれ一定の資格を持っていると10年分の書類が省略できます。資格なら何でもよいという訳ではないのですが、難易度の高いものから1年ぐらい頑張れば取れるものまでいろいろあります。
すでにお持ちの資格が建設業許可の申請に使えるのか、今後のために取っておいたほうが良い資格は何なのかを一度お調べしてみると良いかと思います。
資格がなければ、経験を証明する書類が必要になりますし、経験を証明する書類と資格を併用する場合もありますので、書類の保存もとても重要なのですが、資格の取得を目指すことはご自身の成長にも役立つはずです。ご自身だけではなく会社の従業員さんや同僚と勉強会をして資格の取得を推奨している会社もあります。
お仕事が忙しいなかで資格を取得することは大変かと思いますが、その分メリットも大きいので是非チャレンジしてみてください。
準備5.欠格要件に注意しよう
許可の要件の一つに欠格要件に該当しないことがあります。
簡単に言うと、暴力団でないとか、破産をしていないとか、傷害事件を起こしていたないといったような内容です。
欠格要件に該当してしまうとどんなに経験が豊富で、たくさん資格を持っていたとしても許可の取得ができなくなってしまいます。
特に前もって準備をするという話ではないですが、自分の身に降りかからないとも限りませんので念のためご注意ください。
準備6.社会保険に加入しておこう
以前に比べるとだいぶ少なくなりましたが、会社で雇用されて勤めているのに社会保険に加入していない方がいらっしゃいます。
加入義務があるのに手続きをしていないのであれば、もちろんお勤め先の会社も悪いのですが、社会保険の控除がないほうが自分の手取りが増えるので、本人がそれを良しとしている場合もあります。
社会保険の加入記録は、公的に証明されますので、過去の勤務経験などを証明するためにもきちんと記録を残しておきたいものです。
まとめ:今日からできる建設業許可の取得準備
今回は、建設業許可を取得するために今日からできる準備についてご紹介しました。
どれも当たり前にできそうな内容ですが、日々の仕事に追われているとつい疎かになってしまいがちな内容でもあります。
近い将来に建設業許可の取得を検討されている方は、ご自身の現状を再確認して、改善できる点があれば是非取り組んでみてください。
今日からの取り組みがいずれ身を結ぶ日がきっと来ると思います。
- 事業所得で確定申告をする
- 役員登記を確認しておく
- 取引の記録をしっかり残す
- 資格の取得にチャレンジしてみる
- 欠格要件に注意する
- 社会保険に加入しておく
最後までお読みいただきありがとうございました
\建設業アンケート2022結果速報/